発展途上国の都市のスラムや農村など、恵まれない境遇の子供たちがコンピューターに触れるきっかけを作ろうと、コンピュータ教育機関NIITの名誉教授スガタ・ミトラ(Dr. Sugata Mitra)博士の発案により、国際金融公社(International Finance Corporation:IFC)との合弁で1999年に「壁の穴(Hole in the Wall)」、通称「HiWEL(ハイウェル)」という名で立ち上がったプロジェクトがある。
当初はデリーのカルカジ(Kalkaji)地区のスラムに設置した1台のコンピューターによって始まり、いまやインド国内をはじめ、ブータンやカンボジアなど海外の発展途上国をも含む、のべ数百台の規模で広まっている。
ミトラ博士がハイウェルを通じて提唱する「低侵襲教育(Minimally Invasive Education)」では、自由にアクセスできる1台または数台のコンピューターを子供たちに与えることで、自主性と好奇心を引き出す教育を試みてきた。
スラムでは、子供たちはいつもの遊び場に突如出現したコンピューターに気軽に触れることにより、様々な操作を自主的に覚え、また交代で利用するなどの協調性なども育まれたという。
コンピューターには子供たちの好奇心に応える学習プログラムがインストールされており、誰の力も借りずに学習できる仕組みになっている。
農村の学校にも配布され、従来の授業では補いにくい、コンピューターならではの教育に活用されている。
さらに特許を取得した特殊加工を施し、極寒のレーから砂漠のジャイサルメールに至る、戸外での利用にも耐えるようになっているのも特徴だ。
近年ハイウェルは、草の根レベルでのコンピューターリテラシーの普及に貢献したとして、世界情報サービス産業機構(World Information Technology and Services Alliance:WITSA)により「デジタル機会賞(Digital Opportunity Award)」を受賞している。