高騰を続けるムンバイの不動産価格は、「アジア最大のスラム」と呼称されるダラヴィ地区も例外とはしない。
現在、同地区とその周辺では1,500億ルピー規模の再開発プロジェクトが計画されているが、プネのNGO「マシャル(Mashal)」調べによると調査開始からこれまでの1年半の間に、ダラヴィでは6,000〜7,000軒の物件が売り出され、その売却総額は既に70億ルピーにものぼっていることが分かった。
9月10日付ナブバーラト紙が報じた。
同NGOによれば、こうしたスラムの物件は主に、まもなく竣工が予定されている「ダラヴィ再開発プロジェクト(Dharavi Redevelopment Project)」に期待を寄せる個人投資家が買い付けている。
マシャルは、「スラム住民に現状を知らせぬままプロジェクトを断行しようとしている」という市民からの批判を受け、スラム再開発委員会(Slum Redevelopment Authority)からの依頼で調査を行っており、膨大な面積に横たわるスラムの家屋一軒一軒を、地理情報システムを導入し、ダラヴィ住民の協力を得ながら特定している。
この調査によると、スラム地区内の住居は平均11〜18平米、売却価格は1軒あたり100万〜300万ルピーといい、買い手は主に個人投資家だという。
ダラヴィの再開発には、政治家と不動産・建設業界との密接な癒着が、ほぼ既成の事実として疑われており、「第2のエンロン事件」が巻き起こるものと危惧する声もある。
例えば再開発プロジェクト参入は最終的に5社が選抜されるが、政治家の強力なバックアップを受ける一部業者はカルテルを結び、プロジェクトの獲得を画策していることが、これまでにも繰り返し問題視されてきた。
総選挙のあった7月には予定されていた競争入札が2度も延期されるなど、ダラヴィ再開発プロジェクトは政治の小道具に利用されている、という不満も上がっている。