ニューデリーに本部を置く大手情報技術会社エイチシーエル・テクノロジーズ(HCL Technologies Ltd.:以下HCL)の幹部社員によれば、欧米先進国が不安定な経済環境から脱しきれない中で、今後数年間の同社収益成長を維持すべく、新興市場に賭ける戦略に打って出ようとしている。
HCLのようなインドの情報技術企業における業務のほとんどは、欧米顧客から受託契約から成っている。
内容は、コンピュータソフトウェア開発やバックオフィスサポートなどを、物価の格差を活かし、先進国の顧客にとって競争力のある価格で提供するというものが典型だ。
一方で既存顧客企業の予算削減傾向や、欧州の債務危機、米国経済の回復の遅れなどにより、これらIT企業はターゲット市場の多角化を余儀なくされており、特に景気低迷の影響から脱し、早い成長ペースを取り戻しているアジア、アフリカ、南米諸国に目を向け始めている。
「(新興国へ)投資しているのは、世界のどこよりも速く成長するだろうと見越してのこと」同社上級バイスプレジデントでアジア太平洋・中東・アフリカ地域責任者のヴィレンダー・アッガルワル(Virender Aggarwal)氏は最近のインタビュー記事の中で述べている。
「新興国の成長傾向は今後も継続し、アウトソーシングに対する需要環境は安定または向上するだろう」
収益でインド国内トップの座に君臨するタタ・コンサルタンシー・サービシズ(Tata Consultancy Services Ltd.)は17日、第3四半期の連結純利益を公開したが、アウトソース業務の持続的な受注に支えられ、予想を上回る30%の成長を遂げたと発表した。
一方で第2位のインフォシス・テクノロジーズ(Infosys Technologies Ltd.)が先週発表した第3四半期純利益は、14%以上の成長があったものの期待を下回る結果となり、先進国市場の鈍い回復と通貨変動が、今年のインドのアウトソーシングセクターの成長を狂わせる可能性があると警告している。
ウィプロ(Wipro Ltd.)に次ぐ4番手のソフトウェア輸出会社であるHCLは19日、会計報告を公開する予定だが、ダウ・ジョーンズ・ニューズワイヤ(Dow Jones Newswires)誌が26人のアナリストから集計した平均予測では、純利益は23%成長の36億7000ルピーと見込まれている。
「英国や米国という2つの主要市場以外にもヘッジしていかなければならない」アッガルワル氏は述べているが、財務予測についてはコメントを控えた。
同社は現在、アジア、アフリカ、オーストラリア地域の顧客から収益の15%を得ているが、「1年ほど前までは12%ほどだった」と同氏は述べ、新興市場における強力な成長は、一部銀行業や金融サービス業により牽引されていると話している。
アフリカ地域において同社は、インド最大の携帯電話通信会社バルティ・エアテル(Bharti Airtel Ltd.)が昨年参入して以来、テクノロジーアウトソーシング分野におけるインドの成功モデルを再現する形で、テレコム系企業からの盛んな需要を経験しているという。
「バルティ社のアフリカ地域における参入は、コストを削減してコア事業に集中したいと考える地元テレコム企業からの、アウトソーシングサービスに対する需要に火をつけた」アッガルワル氏は説明する。
またHCL社はアフリカ地域の鉱業、日用品販売業、石油業、小売業からも盛んな引き合いを受けているという。
アッガルワル氏によれば、新興市場における業務契約は、平均およそ1000万ドルから2000万ドル程度と規模こそ小さいが、数年次に渡るものが多い。
一方のオーストラリアやニュージーランドに関しては先進諸国と同レベルの5000万ドル以上の契約が多いとのことで、「新興国との取引は営業利益率こそ少ないが、懸念は少ない」と言い切った。
同社はケニアやフィリピンなど、強力な成長が見込まれる市場におけるプレゼンスの拡大も計画しているといい、またロシア、インドネシア、サウジアラビア、トルコなどには既に事業所を置いていると話す。
原文:HCL Technologies Bets On Emerging Markets to Drive Growth