20日、内閣において、原発事故発生時の補償金限度額を三倍にすべきという提言を含めた閣僚らの勧告を記載した草案が承認された。
これにより現国会開催期間中において、国内における原子力開発市場の開放を実現するための法案が可決され、いよいよ前進する可能性が高くなった。
今回の内閣決定により、これまで2年間に渡って膠着状態が続いていた「原子力損害に対する民事責任(Civil Liability for Nuclear Damage Bill)」を巡る問題が、いよいよ終結する見通しが立った。
慢性的なエネルギー不足のインドにおいて、開放されればその規模1,750億ドルともされる原子力市場へは、欧州や日本を含む海外企業の盛んな投資意欲がみられる中、この2年間は待ったの状態が続いていた。
修正法案をインド国会が承認次第、2008年に締結された米との民間核開発協定がいよいよ実効する形となる。
法案の通過はマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相にとっても、今年末にかけて予定されているバラック・オバマ(Barack Obama)米大統領の訪印に先駆け、欧州国営企業との競争参加を模索する米民間企業の参入を可能とするいわば「土産」として、達成しておきたい課題のひとつである。
インドは2032年までに、原子力発電所を現在の13倍まで増設することを目標にしている。
ヴィーラッパ・モイリー法務大臣(Law Minister M. Veerappa Moily)によれば、閣僚らの勧告を付記した新たな草案は、上院・下院ともに提出される。
31名の議員や閣僚らで構成され18日に開催された審議会では、原発事故の際の補償金を150億ルピーにするべきと勧告した。
現与党であるコングレス主導連立政権は3月、野党からの補償金額の引き上げを強く主張するという異議により法案提出を遅らせざるを得なくなっていた。
審議会ではまた、民間企業による原子力発電設備の経営を認めない方針を勧告している。
いっぽうで「政府単体では原子力発電設備の拡大資金がまかなえず、民間セクターからの資金の流入が不可欠である」とは原子力発電に詳しい防衛研究・分析学会(Institute for Defense Studies & Analyses)所属のアナリスト、バラチャンドラン(G. Balachandran)氏。
インド政府はこれまで、民間核技術提携のための協定を、日立GEニュークリア・エナジー、ウェスティングハウス・エレクトリック(Westinghouse Electric Company LLC)、仏アレヴァ(Areva SA)との間で調印している。
インドにとっても事故責任を巡る一連の考え方は重要な課題である。
1984年、マディヤ・プラデーシュ州ボーパールの米ユニオン・カーバイド(Union Carbide、現ダウ・ケミカル(Dow Chemical)傘下)社工場から有毒ガスが漏れ、多くの人が犠牲になった事故の記憶は、依然鮮明な記憶として残っている。
この事故でインド政府は同社に対し33憶ドルの損害賠償を請求したが、最終的にはわずか4.7億ドルで和解するに至っており、世論からの大きな批判を招いている。
原文:Wall Street Journal, 20th Aug. 2010