騒然としたコルカタの中心部、とあるカーリー寺院。
一見すると典型的なカーリー女神像が安置されているが、その神前には見慣れないものが並んでいる。
麺、箸、ご飯などの中国風の供物だ。
10月17日付ナブバーラト紙が、重要な年中行事であるダセラやディワリの時期、インド唯一のチャイナタウンがあるタングラ(Tangra)地区のカーリー寺院へお参りを欠かさない、中国系住民らによる宗教や文化を超えた静かな信心について伝えた。
一年を通じ、チャイナタウンの住民と周辺のヒンドゥ教徒との間では、ほとんどこれといった交流がない。
しかし年に1回、カーリー・プージャ(ダセラの千秋楽とも言える日で、カーリー女神に最も盛大な祈りを捧げる)には中国系住民もみな休暇を取り、女神の前に祈りを捧げる。
「カーリー・プージャは特別な日です。ヒンドゥ教徒の方々と同じぐらい、私たちも熱心に祈ります」イソン・チェンさん(55)が説明するように、この寺院を中国系住民が尊ぶようになったのは由縁がある。
現在のカーリー寺院は12年前に建立されたものだ。
この場所には元来、大木が聳えており、それを神木と信じる人々が60年ほど前から、シンドゥール粉で赤く色づけした黒い聖石を2つ安置し、朝晩祈っていた。
それを見た中国系住民らも、いつしかそれに倣うようになっていたという。
「ある日、チャイナタウンに住む10歳の男の子が病にかかり、どんな薬も治療も効かなかった。両親は最後の頼みと、息子を神木の下に休ませ、7日7晩、寝ずに祈り続けました。7日目、奇跡が起こり、男の子の病は癒えたといいます。それ以来、私たち中国系住民は仏教徒であるかキリスト教徒であるかに関わらず、カーリー寺院を心の拠り所とし、大切にしています」イソンさん。
カーリー寺院の建設の際にも、中国系住民による多額の寄付が集まったという。
ディワリの夜には2,000人もの中国系の人々が集まり、本国からもたらしたエキゾチックなお菓子を供える。
プージャ(ヒンドゥ教徒の祈祷)にも中国風の背の高い蝋燭が灯され、厄除けに手すき紙製の札を燃やすなど、宗教文化も極めて自然に融合している、世界でも類を見ない風景が見られる。