ケーララ州ティルヴァナンタプラム近郊カヌール(Kannur)県の裕福なイスラム教系住民、いわゆる「ケイ(Keyi)」族に属する一家が、60年以上前からサウジアラビアの国庫に保管されている9億ドルあまりの財産の返金を求めている問題で、同州政府はサウジアラビア政府との交渉をインド政府に働きかけている。
サウジアラビアの国庫に眠る一家の財産は、1950年代当時で140万サウジ・リヤル(1リヤルは現在14.40インド・ルピーほど)にのぼり、60年以上塩漬けになったままになっている。
このため一家は過去10年以上、サウジアラビア政府に返金を求める訴えを続けているが、いまだ何の進展もないため、ケーララ州政府がインド政府に働きかけするための特別担当官を任命するまでになっている。
そもそもの経緯は、この一家の子息が136年前、イスラム教徒の聖地メッカで土地を購入し、ハージ巡礼者の休息所を建てたことに始まる。
ところが1950年代に始まったメッカ周辺の施設・設備の近代化プロジェクトに伴い、この土地がサウジアラビア政府に当時の金額で140万サウジ・リヤルで取得され、現在の価値で500億インド・ルピー(9億ドル)ほどになっているものと試算されている。
イスラームの財産管理原理のひとつである「ワクフ(Waqf)」によれば、アッラーに捧げられた財産は、本人およびその子孫によって所有を主張できることになっている。
ただしサウジアラビアの法律によれば、取得された財産は同国内で使わなければならないことになっており、一家も「返金されればハージ巡礼者のための住居を建てられる」と考えているという。