2008年、インド最大の商業都市ムンバイの中でも最も観光客が多く集まるサウス・ムンバイ地区を襲った同時多発テロ。
その際に最も長い3日間に渡り犯行グループが立て籠もり、人命と建物ともに大きな犠牲を出したムンバイの象徴でもあるタージ・ホテルにおける、従業員らの命を投げ打った勇敢な対応が、ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)の事例研究で用いられることになった。
1月27日付PTI通信が報じた。
同ホテルの従業員たちが職務を逸脱してでも宿泊客を守ろうとした姿勢は、事件発生直後から多くの人の胸を打ち、今回、経営学修士課程(MBA)の世界最高峰で、「タージ・ボンベイに見られた顧客第一主義のリーダーシップ事例(Taj Bombay: Customer-Centric Leadership)」と題され、ムンバイ出身のロヒト・デシュパンデ(Rohit Deshpande)教授による講義が決まった。
テロリストによる襲撃の際には、同ホテルの従業員らの多くも凶弾に倒れた。
「そうした危険を知りながら持ち場を離れず顧客を守ろうとした従業員らの行動の動機となったものを、幹部経営陣でも説明することはできなかった。従業員は全員、ホテル裏から外へ脱出できる非常口の存在を知っており、人間の自然な本能として、生き延びるためには逃げることの方が正しい判断だった。しかし一部の従業員はその本能に反し、命を宿泊客のために捧げることを選択してしまった」講義は同ホテル従業員らへのビデオインタビューも交えたドキュメンタリー調で展開される。
さらに「職場における上下の区別が明確でないことが、従業員の間に強力な仲間意識を植え付け、結果として使命感を一層強めている」というインドの職場環境の特徴にも触れている。
同ホテルの襲撃時、自らの妻と息子たちがテロリストの餌食となりながらも、宿泊客の安全のためにホテルに残り続けた総支配人(General Manager)の行動も紹介、「従業員教育がこうした考えを植え付けることはとてもできない」とデシュパンデ氏はまとめ、同事例は危機発生後の企業ブランドの回復についても学ぶことが多いと語っている。